「シルバーカーに見えないものはないか」と探す気持ちは、よく分かります。実際、そう呼ばれる製品は売られていますし、検索すると「若い人向けはありますか」という問いも出てきます。
そこを否定するつもりはありません。柄や色や形は、好きなものを選んでいいと思っています。
ただ、見た目では選べないものが1つだけありました。
「シルバーカーに見えない」と呼ばれているもの
まず、誰がそう呼んでいるのかを見ました。ここでは、公開されている基準と各社のサイトから読み取れることを書きます。押し心地や走りやすさは、店頭で押して確かめてください。
紹介しているのは販売店や比較サイトです。福祉用具専門相談員が運営する介護マーケットは「ファッション感覚の豊富な柄デザインで『シルバーカーに見えない』外観」と書いていました。個人のブログでは、トートバッグ風・シンプルな形・買い物カートのような見た目、という3つの型に分けているものもありました。
一方で、作っている側の言葉は違いました。
つまり、確認した2社の分類名の中に「シルバーカーに見えない」という区分はありませんでした。作り手は大きさや用途で分けていて、見た目を名前にはしていない。言葉の出どころまでは確かめていないので、そこは決めつけないでおきます。
そして、この言葉があること自体は悪いことではありません。買う人が気にすることを、売る側が言葉にしただけです。
ただ、その言葉で選べる範囲には限りがあります。
見た目では選べない1つ
SGマークとは、製品安全協会という団体が、定めた基準に適合すると認めた製品に付ける印です。
この協会が福祉用具として基準を置いている品目は7つあり、その中に「シルバーカー」と「歩行車」が別々に入っています。番号も違って、シルバーカーは0075、歩行車は0120です。
何が違うのか。品目ページの説明がこうでした。
シルバーカーの説明。
自立歩行ができる主に高齢者の方が屋外での移動や買い物などの運搬に使用する製品です。歩行補助車とも言います。
歩行車の説明。
歩行の安定性又は支持のために用いる歩行補助機器を言います。歩行者がグリップや肘あてなどで体重を支えて移動するものが該当します。
基準の本文まで読むと、もっとはっきりしていました。
ハンドルに寄りかかって体を支えながら歩く、という使い方は想定されていない。そう読むのが素直だと思います。
そして、シルバーカーなのか歩行車なのかは、柄や色を見ても分かりません。見た目で選べないのはここです。
実際、上位に出てくる記事の中にも、この点を書いているものがありました。シルバーカー卸センターは「手すり等につかまらないと歩けない方のご使用は危険ですので歩行車をご使用ください」と書いていますし、22商品を実機で検証しているマイベストも、要介護・要支援の認定を受けている場合や転倒歴がある場合には歩行器を勧めています。
基準は「誰のための道具か」を書かせている
シルバーカーの認定を受けるには、製品と説明書に何を書くかまで決められていました。その中に、こういう項目があります。
この製品は主として自立歩行できる高齢者が、より安定して歩行できるように補助的に使用するものである旨。
手すり等の固定したものにつかまらなければ歩行できない人や、介助者に手伝ってもらわなければ歩行できない人等には適さない旨。
「適さない人」を書くこととされています。 売るための表示ではなく、向かない人を先に示す表示です。これは製品本体の表示と、取扱説明書の両方に求められていました。
そして取扱説明書のほうには、さらにこう書くこととされています。
使用に適しているか否か不明な場合には、必要に応じて専門家等(福祉用具専門相談員、作業療法士、理学療法士等)に相談し購入されることを勧める旨。
迷ったら相談してから買うように、と説明書に書くよう定められている。判断を売り手が引き受けない形になっています。 なおこの相談の勧めは、製品本体の表示ではなく取扱説明書のほうに書かれる項目です。
さらに、使用上の注意として書くこととされている項目に、こういうものもありました。
加齢等によって、この製品が合わなくなり危険となる場合がある旨。屋内の移動が困難になったり、屋外でも短距離の移動が困難になったりした場合には使用を中止すること。また、定期的に専門家等にこの製品が適切かどうかを確認する旨。
買った時点で終わりではない、という前提で書かれています。
歩行車のほうの基準も読みました。表示と取扱説明書の項に、これらと同じ趣旨の要求は確認できませんでした。
ただし、この違いだけでどちらの基準が厳しいかを比べることはできません。 どちらにも安定性の試験が定められていて、立て方が違います。シルバーカーは傾斜・ハンドル・座面の3つ、歩行車は前方・後方・側方の3方向です。それぞれ別の要求であって、注意書きの代わりに試験があるという関係ではありません。
ただしSGマークは任意です
ここまで書いてきた表示があるのは、SGマークの認定を受けた製品だけです。
もう1つ。SGマークは基準に適合した印であると同時に、賠償の仕組みでもあります。
賠償制度のページによれば、一事故あたりの賠償金額の上限は1億円。ただし条件が3つ挙げられています。SGマーク付き製品によって人的損害が生じたと認められること、製品に欠陥が認められること、事故と製品の欠陥に因果関係が認められること。
転んだら出るという制度ではなく、製品の欠陥が認められた場合の仕組みです。そしてマークが付いていない製品は、そもそもこの制度の外にあります。
それから、マークは基準に適合したという印であって、その製品が使う人の体に合うかどうかの判定ではありません。マークが付いていることと機能が揃っていることも別です。基準の中に「ハンドブレーキが付いていないため、坂道等の使用では十分注意する旨」という表示項目があり、これは「ハンドブレーキが付いていないもの」に限る、とわざわざ書かれています。ハンドブレーキのない製品も認定の対象になっているということです。
表示は、最初に大きな字で書くことになっている
基準が決めているのは、何を書くかだけではありませんでした。どこにどう書くかまで指定があります。
なお、(3)から(7)はフレームやバッグ等の見やすい箇所に大きな字で表示し、(5)及び(6)については、表示の最初に記載してより認知しやすいものであること。
(5)は品名、(6)が先ほどの使用対象者です。つまり「これはシルバーカーです」と「こういう人には適さない」の2つを、表示の最初に、大きな字で、ということになります。
店頭で本体やバッグを見たときに、まずそこが目に入るように作られている。裏を返せば、その表示が見当たらない製品は、認定を受けていない可能性があります。
なお、ここまで引いてきたのは協会が「公開用」として出しているPDFで、寸法や制動力の具体的な数値は伏せられています。制定日や改正日の記載も、全文の中には見当たりませんでした。基準は改められることがあるので、2026年9月22日に読んだものだという前提で見てください。
認定品を一覧で探せるかどうか
では、SG認定を受けたシルバーカーを製品名で探せるのか。協会のサイトを辿ってみました(2026年9月22日)。よくある質問には「メーカー毎にSGマーク付き製品を紹介したページのリンクをつけております」とあるのですが、その先は品目名ごとの一覧表で、メーカー別のリンクは見当たりません。案内は「各事業者にお問合せください」でした。私が探した範囲では、認定を受けたシルバーカーの製品名の一覧には辿り着けませんでした。
そうすると、確かめる場所は製品そのものになります。
では、どこで見られるのか
ホームセンターと介護用品店では現物が置いてあることが多く、品名と「適さない人」の表示を自分の目で確認できます。 通販は数が多く、商品ページに寸法や重量が載っているぶん絞り込みやすい一方で、表示を確かめるのは届いてからになります。
押し心地や走行の比較は、先ほどのマイベストの記事が22商品を実際に押して検証しています。身長155〜165cmの人が2cmの段差や90cm幅のUターンを試した結果まで出ているので、候補を絞る段階ではそちらのほうが役に立ちます。
買う前に確認すること
基準が製品や説明書に書くよう求めている項目は、そのまま確認する項目になります。
そして、自分に合うかどうかが分からないとき。基準は、福祉用具専門相談員・作業療法士・理学療法士といった専門家に相談してから買うことを勧める旨を、説明書に書くよう定めています。基準の側が「迷う人がいる」と想定していることになります。
ではどこへ行けばいいか。市町村が設置している地域包括支援センターが、高齢者の総合相談の窓口です。厚生労働省によれば全国に5,487か所あり、都道府県ごとの一覧が同省のページから辿れます。福祉用具の相談ができるとまでは書かれていないので、まずは総合相談の入口として使う形になります。介護用品を扱う店に福祉用具専門相談員がいることもあります。
服のサイズを数字で確かめる話を60代着てはいけない服は本当にあるのかに書きましたが、考え方は同じです。似合うかどうかは人が決めることで、合うかどうかは表示と数字で確かめられます。ほかの持ち物については60代の持ち物に、喪服や礼服のことは喪服・礼服にまとめています。
まとめ
「シルバーカーに見えない」ものを探すのは、おかしなことではありません。毎日使うものですから、気に入った見た目のほうがいいに決まっています。
ただ、柄と色と形で選べる範囲の外に、1つだけ別の話がありました。シルバーカーなのか、歩行車なのか。この2つは製品安全協会が別の品目として分けていて、見た目からは分かりません。
そして認定基準には、向かない人を書くこと、迷ったら専門家に相談するよう勧めること、加齢で合わなくなったら使用を中止することまで定められていました。基準がそこまで書かせているということは、合うかどうかが人によって変わる道具だということだと思います。
ただしこの認定は任意です。マークが付いていない製品には、その表示そのものがありません。
種類を決めてから、好きな柄を選ぶ。順番はそれで足ります。