埼玉県で墓じまいの補助金はもらえるのか
もらえません。「補助金は20万円までですか」という質問をよく見かけます。今回確認した公式の制度で20万円という数字に一致するのは、群馬県太田市の助成金の上限だけでした。しかも太田市が持つ八王子山公園墓地の墓石撤去だけが対象です。市のPDFには「助成対象は『太田市八王子山公園墓地』の墓石撤去に係る費用のみです。他墓地の墓石撤去費用は対象となりません。」と書かれています。埼玉の墓地には使えません。
当たり方は3段階です。まず各市町村の改葬(かいそう)の案内ページを開き、次に墓地の担当課のページを開き、最後に例規集の「ほ」行で「墓地」から始まる例規を全部開く。改葬とは、すでにお墓に納めてある遺骨を、別の墓地や納骨堂へ移すことです。墓じまいにお金を出している自治体なら、この3か所のどこかに痕跡が残ります。
県の側にも制度はありませんでした。埼玉県の墓地担当は保健医療部生活衛生課で、「墓地・埋葬に関すること」のページに補助の記載はなく、経営許可の問い合わせは市町村へと案内しています。改葬を許可するのも市町村長です。「埼玉県の補助金」という探し方そのものが、実態と噛み合っていないということになります。
なぜ自分で開いたのか。「墓じまい 補助金 埼玉県」で検索すると、1ページ目の10件はすべて業者の記事でした(2026年9月10日時点)。「ない」と書いている記事はあります。ただ、どこまで調べて「ない」と言っているかを示した記事は10件のうち0件でした。平均13,000字を超える長い記事が並んでいるのに、根拠の部分だけがない。いずれ自分が役所に電話する側になるので、他人の「ない」を信じるより63件を自分で開くほうが早いと思いました。
「墓じまいの補助金」と呼ばれているものは3種類ある
呼び名はひとつでも、中身は「撤去費の助成」「使用料の還付」「合葬墓への受け入れ」の3つに分かれます。そして全国で公式に裏が取れた7件は、どれもその自治体が持つ墓地を使っている人だけが対象でした。
1つ目の撤去費の助成は3件だけです。千葉県市川市、千葉県浦安市、群馬県太田市(2026年9月10日確認)。
市川市の「市川市霊園一般墓地返還促進事業」は、原状回復費用の助成と使用料の還付を組み合わせた制度でした。ただ、ページの冒頭に「【受付終了しました】使用料の還付及び原状回復費用の助成については、予算額に達したため受付を終了しました。(令和8年5月22日現在)」とありました。その後、同じページに「【受付再開します】9月開催の市川市議会にて補正予算の承認が得られたため、受付を再開いたします。(令和8年9月16日現在)」が足されています(2026年10月1日確認)。制度は残ったまま、予算に達すると受付が止まり、補正予算で開き直る形です。
浦安市は「補助金額の上限は150,000円」で、対象は墓地公園の通常墓所または小型墓所の使用許可を受けている人です。太田市は上限20万円で、「返還届と同時に助成金の申請をすることはできません。墓石の撤去が完了した後に申請をお願いします。」と順番まで指定しています。金額の規定は画像PDFに「祭祀費用を除く墓石撤去に係る費用として支払った額の総額又は20万円のいずれか低い方の額」。上限であって、20万円が出るという意味ではありません。
2つ目の型が使用料の還付です。兵庫県明石市、静岡県磐田市、宮崎県小林市などがこれにあたります。撤去費は自分で払い、戻るのは納めた使用料の一部だけ。3つ目が合葬墓への受け入れで、東京都の都立霊園には現金の補助はなく、墓所を返して合葬埋蔵施設へ移す制度があります(工事費と改葬費は使用者の負担)。
なぜ自治体が出すのか。答えは制度の名前に出ています。市川市の事業名は「返還促進事業」で、太田市の対象は「返還届を提出し、墓石の撤去が完了した利用者」。つまり、自治体が自分の墓地を空けて次の人に貸すための制度です。だから民間霊園や寺院墓地の墓じまいには使えません。今回の調査でも、民間・寺院の墓じまいを対象にした自治体の補助は1件も確認できませんでした。
一方で、公式に「ない」と言い切っている市もあります。横浜市は「横浜市には墓じまいに関する補助金制度はありません。」、神戸市は「神戸市では助成金制度は設けていません。」というページを持っている。ページを1枚作って答えている自治体と、何も書いていない自治体がある。埼玉は全部が後者でした。
埼玉で「戻ってくるお金」の規定があるのは3市。中身が違う
3市とも「墓じまいの補助金」ではなく、市営墓地を返すときに納めた使用料の一部が戻る規定です。
公営墓地が無い市町村では、そもそも還付という話が起きません。県の一覧に載っている公営墓地は8市町。残る55市町村にあるのは寺院墓地・共同墓地・民間霊園なので、市に返しても戻る使用料が存在しない。ここは業者の記事がいちばん書き落としているところです。
還付規定を持たない4市町も見ておきます。川口市の安行霊園は「墓地の利用をやめる際は、原状回復(基礎石のみを残した状態)のうえ返還してください」と書いてあるだけで、還付の記載はありません。志木市は市営墓地条例の第23条に「既納の使用料及び管理料は、還付しない。ただし、市長が特別の必要があると認めるときは、その全部又は一部を還付することができる。」とあり、第19条で「直ちに当該墓所又は個別収蔵施設を原状に回復し」て返還すると定めています。越生町の町営樹木葬墓苑は条例第14条が「第9条第1項の場合を除くほか、既納の使用料は、返還しない。」で、町の案内でも「使用許可決定後の取下げ及び使用料の返還はできません」と明記しています。小鹿野町は条例に「既納の使用料及び管理料は、還付しない」とあり、町長が特別の理由を認めたときのただし書きが続く形でした。
ただ、還付の規定があっても自動で戻るわけではありません。秩父市は管理料に未納があると返還届自体を受理できないと書いていますし、墓石が建っていれば撤去工事と改葬許可申請が先です。戻る使用料より撤去費のほうが大きくなることは、ふつうにあります。
蕨市の1件だけ、確認できていません。市の例規集がJavaScriptで描画される仕組みで例規の一覧に到達できず、市のサイトに塚越霊園と改葬の案内ページも見つかりませんでした。電話で聞くしかない1件として、そのまま残します。
63市町村の確認一覧
判定は「なし」59、「還付規定あり」3、「確認できず」1です。自治体名・判定・改葬許可の手数料・担当課・根拠URLを並べました。
例規のレベルまで下りると、「墓地」と「補助」の両方が出てくる規程が1件だけありました。吉見町の「墓地整備事業補助規程」(昭和53年規程第4号)です。ただ、対象は10世帯以上が使っている集団墓地の整地・外周の土止めと塀・区画通路の工事で、「補助率は当該事業に要する経費の額の10分の2以内とする。ただし、1事業に対し200万円を限度とする」。個人の墓じまいや墓石の撤去は対象に入っていません。集落で共同墓地を直すときの規程が、検索では「墓じまいの補助金」に見えてしまう。63件で唯一のこの1件も、探していたものではありませんでした。
補助金の代わりに、役所に電話する前に確認する3つ
補助金が無いぶん、電話する前に確認して意味があるのは、手数料と窓口・返還時の還付規定・業者の説明の3つでした。
①改葬許可の手数料と窓口。「無料」と明記していたのは、越谷市・熊谷市・川越市・上尾市・狭山市・行田市・羽生市・白岡市など14自治体。表現の違う「手数料はかかりません」(さいたま市)「費用はかかりません」(川口市)を足すと16自治体でした。有料は美里町の1件200円だけ。窓口は市民課・戸籍担当が多いものの、所沢市・上尾市・狭山市・入間市のように生活環境課や環境課が受けているところもあり、市民課に電話してから回されることがあります。
②公営墓地なら、返還したときの還付規定。自分のお墓が新座市営墓園・さいたま市営霊園・秩父聖地公園のどれかにあるなら、規定に当たるかどうかを先に見ておく価値があります。新座なら使ったあとでも半額、さいたま市と秩父市は未利用・未使用のときだけ。判断の分かれ目は、使用許可を受けた日付と、墓石を建てたかどうかです。
③業者が「補助金がある」と言ったら、自治体名と公式ページのURLを聞く。永代供養を扱う会社が出している「墓じまいの補助金制度がある自治体まとめ【2026年】」は10自治体を挙げていますが、埼玉県内の自治体はゼロでした。遺品整理の会社が出している「寄居町の墓じまい補助金はある?」も、寄居町の公式ページと例規に該当する記載は見つかりませんでした。タイトルに自治体名が入っていても、中身は別の県の事例だけ、ということがある。
補助金の有無にかかわらず、遺骨を動かすには改葬許可証が要ります。越谷市の案内ページで手順を確かめました(2026年9月10日)。
移す先を決める
移す先の墓地・納骨堂を決め、受け入れの証明を用意する(要るかどうかは自治体で違う)
改葬許可を申請する
いま遺骨がある墓地の管理者から埋葬の事実についての署名・捺印をもらい、遺骨のある市町村に申請する
遺骨を移す
交付された改葬許可証を持って、遺骨を移す
ただ、2で要る書類は自治体で違います。越谷市は改葬先の受入証明書は必要ないと書いていて、手数料も「手数料は無料です。」と明記。書類の様式も部数も市町村ごとに違うので、1の前に窓口へ電話して、必要書類と手数料を先に聞くほうが早い。この記事では費用の相場は扱いません。
墓じまいの見積もりを頼む前に確かめること
埼玉には撤去費の助成が見つからなかったので、見積もりの前に確かめるのは、還付の規定に当たるかどうかと、改葬の書類のほうです。
制度が変わったら
この記事は2026年9月10日時点の記録で、来年も同じとは限りません。制度は年度で変わりますし、確認できなかった1件も残っています。
気をつけたいのは、県の公営墓地一覧が「令和3年7月現在」であることです。5年前の情報で、その後に新しい公営墓地ができていないかを検索した範囲では見つかりませんでしたが、県のページが更新されていないだけという可能性も残ります。公営墓地の有無は、住んでいる市町村のページで確かめてください。
自治体の側が動くこともあります。市川市のように予算に達して受付が止まり、数か月後に再開することもあれば、新しく始まる自治体が出てくることも。太田市と浦安市の案内ページは2026年9月10日時点で公開されたままでした。
更新の方針はこうです。年に1回、9月に63件を同じ手順で当て直す。自治体から「うちには制度がある」と連絡をもらったら、その時点で直して取得日を入れ替える。蕨市の1件は電話で埋めます。次に当て直したとき、たぶん数字はどこか変わっています。変わらなかったことも、そのときは書きます。
墓じまいのあとの遺骨をどうするかは、墓じまい・仏壇じまいのカテゴリと永代供養・樹木葬に書いていきます。群馬県のお墓なら、35市町村を確認した記事があります。愛知県は54市町村を確認した記事を。海に撒く選択を考えている方は、散骨を後悔した人は実際にいるのかへ。兵庫県のお墓なら、41市町を確認した記事があります。費用を誰が出すかで揉めそうなら、誰が払うのかを条文で確かめた記事を先に。