ペットの遺骨に、カビは生えるのか

「稀です」と書いている会社が多数ですが、全社ではありませんでした。

手元供養とは、お墓に納めず、遺骨の全部または一部を自宅に置いて供養する方法です。骨壷を家に置く以上、湿気とどう付き合うかがついて回ります。

根拠は各社ほぼ共通しています。火葬を経た骨には、カビが育つための水分も栄養も残っていない、という説明です。ある店はこう書いています。

それは発生理由となる水分や有機物がお骨に含まれていないからなんです。お骨はかなりの高温で焼かれていて、言い方はすごく悪いのですが(お空のペットちゃんたち、ごめんね)、炭のような状態なんです。

同じ店は、そのあとに留保も置いています。「カビは自然発生するものなので『絶対!100%!大丈夫!』とは言い切れません」。

ひとつだけ、他社と違うことを書いている会社がありました。粉骨を扱う業者です。

結論から言うと遺骨自体にカビが生えるのは稀です。ただし人間の遺骨よりペットの遺骨の方がカビが生える確率は高いです。なぜなら遺骨を撫でたりするからです。

同じページには、実際に見たという記述も続きます。「撫でたときの皮脂が栄養になって…生えていたのを見たことがあります。人の遺骨を撫でる方はほとんどいないのでペット遺骨特有の事象なのではないかなと思います」。8社のうち、この点に触れているのはこの1社だけです。

「カビかも」と思ったものの多くは、お骨の色

緑や青が見えても、カビとは限りません。

2社が同じことを書いています。平和会は、緑やピンクの正体を「カビではなくお身体やお骨の成分が、ご火葬時の化学反応によってついたもの」と説明していました。別の店のブログにはこうあります。

白い部分がほとんどですが、茶色、オレンジ、緑、青などの色がついています

このブログ(2015年10月20日投稿)には写真も載っていて、説明文は「こちらのお骨は、5年前に火葬したわんちゃんのお骨です」「よく胞子と間違われる部分に青い丸印を付けております」。つまり、載っているのはカビの写真ではなく、カビと間違えられやすい色の写真です。同じ記事は「本当にカビが生えてしまったお骨というのも、残念ながらあると思います」とも書いたうえで、多くは勘違いの可能性がある、と続けています。

見分け方として、ある店は5つの点を見ることを勧めています。カビ特有のにおいがあるか。骨壷や骨袋に湿っぽさがあるか。骨壷の中に結露や水分がないか。骨袋やまわりの布類にもカビや湿気がないか。そして、お骨の色だけでなく、まわりの環境にも変化があるか。

並べてみると、5つのうち4つはお骨そのものではなく、まわりを見ていることに気づきます。骨の色だけをじっと見ても判断がつかないので、湿り気や結露といった原因の側に目を向けています。同じ店のよくある質問にも「必ずしもカビとは限りません。においがなく、骨壷や骨袋にも異常がない場合は、お骨そのものの色である可能性もあります」とありました。

色は火葬のときについたもの、と各社は説明しています。そうであれば、あとから広がることはないはずです。一方で、においや湿りは環境が変われば変わります。時間をおいてもう一度見て、変化しているかも手がかりになります。ただし色だけを見てどちらか決められるものではないので、迷うなら火葬を頼んだ先に写真を送って聞くのが早道です。なお、副葬品として入れた生花の色が遺骨に付く可能性を書いている霊園もあります(2019年の記事。ペット火葬服装は普段着でよいかに棺へ入れられるものを並べました)。

カビが起きるとしたら、どの順で起きるか

結露、紙、皮脂。骨より先に、まわりが湿ります。

各社の説明を並べると、道筋が見えてきます。温度差で結露が起き、湿気を吸った紙や布に先にカビがつき、そこから骨壷へ移る、という順で読めます。

カビが育つ条件について、平和会は式の形で書いています。「『ホコリ+汚れ+温度・湿度+水分=カビ』をいかに攻略していくかがポイント」。裏返せば、どれか1つを断てばよい、ということでもあります。骨そのものを変えることはできませんが、ホコリと湿気は減らせます。

結露。 ルミエールは、骨壷の素材と外気の温度差から説明しています。ディアペットは「直射日光の当たる窓際も、骨壷の中と外で温度差が生まれる可能性があることから、万が一にも結露が発生しないとは言い切れません」として、窓辺を避けるよう書いていました。日向ぼっこが好きだった子ほど、つい窓辺に置きたくなります。ペトリィは、昼に暖房で温まった骨壷が夜に冷えることを挙げています。温度差がどれくらいで結露するかは置き場所によるので、避けられる場所から外していくのが現実的です。

紙の箱。 ここに触れていたのは1社だけでした。

骨箱や外装カバーの紙部分が湿気を帯びてそこにカビが繁殖し、そこから徐々に骨壺に浸食してゆきます

同じ会社は、人の遺骨は桐箱に収められることが多いのに対し、ペットの遺骨は多角形の紙製の箱が多い、と指摘しています。「この紙製の骨箱は湿気を吸ったり吐いたりコントロールできません。さらにあの多角形の骨箱はとてもほこりが溜まりやすい形状なのです」。骨より先に、外側が湿るという説明です。

撫でたときの皮脂。 これは4社が書いていました。「汗や皮脂のついた手で触れてしまうと、それに含まれる栄養分がお骨に付着することになります」。骨そのものに栄養が無いのなら、栄養は外から来る、ということです。分骨のときに手袋を使うよう勧めている会社もあります。

置き場所については、ディアペットが換気の悪い押し入れやクローゼットを避けるよう書いています。湿度の数値を挙げていたのは docco で、「室内の相対湿度を60%未満に保つことが一つの目安です」としています。

そしてもうひとつ。永代供養ナビは「骨壷の蓋は開け閉めができる状態です」と書いています。密閉ではない骨壷がある、ということです。パッキン付きの製品もあるので一律ではありませんが、自分のものがどちらかを見ておくと、乾燥剤の章が読みやすくなります。

珪藻土をめぐる10年

同じ商品名のまま、中身が入れ替わっていました。

2018年のスレッドのベストアンサーは、こう書いていました。

珪藻土は吸湿はするが除湿は無理だったんじゃないかな。カビを消すとなると、そりゃ高松塚古墳みたいなことになるな。シリカゲル目一杯詰め込んで、密閉コンテナに入れて、年一回天日干しとシリカゲル交換だな。

推量の形です。断定はしていません。質問者のほうも「カビらしき物」と書いていて、カビだと確定したわけではありません。この一件だけで珪藻土が効かないと結論づけることはできません。

それでも、並べておく意味はあると思っています。同じ店が2015年に勧めていた素材を、いまは別の素材と比べて「より安心」と説明しています。いま珪藻土を骨壷に入れている方には、入れた時期と、そのままになっていないかを確かめる手がかりにはなります。

乾燥剤は、入れるのか入れないのか

ここがいちばん割れました。8社のうち、入れることを勧めるのが5社です。

「入れない」と書いた会社の理由は、こうです。

シリカゲルなどの乾燥材を骨壷の中に入れる必要はありません。骨壺はご遺骨を入れるためのものなので、他の物は入れない方がよいでしょう

一方、分量と交換の時期まで書いていたのは1社だけでした。「ミニ骨壷に使用する乾燥剤としては、小さめ(1〜2g程度)のものを使うのがおすすめです」。交換は「3ヶ月に1回位がベストですが、多湿環境でなく室内であれば実際のところ1年に1回くらいで良いと思われます」。ただしこの記事は人の遺骨向けで、本文にペットへの言及はありません。

置き方に理由を添えていた会社もあります。骨壷の底に乾燥剤を置き、その上に遺骨を戻す。理由は「湿気が下に溜まる傾向にあるため」。遺骨の上に載せるものだと思っていた方には、順番が逆かもしれません。

種類についての注意もありました。ある記事は、シリカゲルのような吸着する素材を挙げたうえで、押し入れ用のような、水がたまる容器型の除湿剤を骨壷の中で使うのは避けるように、と書いています。押し入れ用のあの容器は、吸った水を下に溜める作りです。骨壷の中で倒れたら、と考えれば理由は分かります。同じ「除湿剤」でも、水を溜めるものと吸着するものは別物ということ。

読み比べて気づくのは、入れる・入れないの差より、根拠の書き方の差のほうが大きいということです。分量も交換時期も書かずに「乾燥剤を」とだけ書いてあるページと、1〜2グラムで年1回と書いてあるページでは、読んだあとにできることが違います。

密閉してよいのか。骨壷を開けられないとき

密閉の是非も、正面から割れています。

ペット向けの記事には、パッキンの代わりにテープを巻く方法が出てきます。「テープを巻きつけておくことで、湿気の侵入を防ぐので、カビが発生する水分から守ることができます」。

人の遺骨向けの記事には、逆のことが書いてあります。

骨壷を密閉したまま放置すると、吸い込んだ湿気が内部にこもり、カビの温床となってしまいます

どちらも「湿気をどうするか」を言っているのに、手当ての向きが逆です。閉じて入れないようにするのか、閉じ込めないようにするのか、で分かれています。知恵袋のベストアンサーは「シリカゲル目一杯詰め込んで、密閉コンテナに入れて」と、乾燥剤と密閉をセットで書いていました。粉骨して真空パックにする方法を勧める会社は「カビは空気が無ければ繁殖できません」と説明しています。この記事では、どれが正しいとは決められませんでした。

ここで、知恵袋の相談を。

永代供養ナビの手順は「遺骨を全て取り出す」「骨壷の底に乾燥剤を置く」と、開けることが前提です。開けられない人には使えません。2024年の相談に付いた唯一の回答は、置き場所を工夫することと、蓋をテープで止めることを挙げていました。ただしその回答者自身が「私はペットのお骨を…という経験がないので、骨壺内のカビ問題は初めて知りました」と断っています。

開けられないなら、蓋に触れずにできることだけを先にやる、という順番になります。具体的には最後の章にまとめました。テープで密閉するかどうかは、上のとおり答えが割れているので、すぐに決めなくて構いません。

生えてしまったら

方法は4つ。費用は0円から1万円台までの幅があります。

  • 天日干し。ブルーシートなどを敷いて遺骨を並べ、数時間。「日光消毒」という言い方で説明されています(永代供養ナビ)
  • 洗骨。遺骨そのもののカビは専門業者に頼む、と書いている記事があります。費用の記載はありませんでした
  • 再火葬。ペット専用の火葬場に直接電話をする方法です。費用の目安は容器無しで約7,000円(小型犬から35kgほどの大型犬)
  • 粉骨して真空パック。粉骨と真空パック包装のセットで約11,000円ほど、家庭用の真空パック機なら約6,000円ほど。(いずれも永代供養ナビの記載。2026年9月16日に確認)

天日干しは屋外に遺骨を広げることになるので、人目や風のことは先に考えておきたいところです。なお時間は「2〜3時間ほど」と「半日(数時間)ほど」の両方の記載があり、同じ記事の中でも揺れています。数時間、と受け取れば両方の記載に収まります。

洗骨のほうは、専門の業者に頼むとだけあって費用の記載は見当たりません。頼む前に、いくらかかるかを聞いてから決める話になります。

ひとつ注意したいのは、粉骨についての留保です。ある店は「『粉骨をする=カビを予防する』ということではありません」と書いています。密閉できる容器に入れやすくなる、という利点のほうを挙げた説明です。骨の姿が大きく変わる方法でもあるので、カビへの不安だけで決めてしまうと、あとで気持ちが追いつかないこともあり得ます。

迷ったときの決め方

まず、においと湿りを確かめる。それから、お金のかからない順に。

色が見えただけなら、カビとは限りません。においと湿りに異常がなければ、色のほうかもしれません。

乾燥剤を入れるかどうかは、そのあとで構いません。8社が割れている論点を、すぐに決める理由はありません。入れるなら、分量と交換の時期まで書いてあるページを探して、入れた日を控えておく。2015年ごろに入れた乾燥剤がそのままになっている、という状態を避けるのが、いちばん確実な一手です。

順番にすると、こうなります。においと湿りを確かめる。窓際と押し入れを外す。紙の箱を見る。触る前に手を洗う。ここまでが費用のかからない範囲です。そのうえで乾燥剤を検討し、入れたら日付を控える。開けられないなら、蓋に触れない範囲だけをやって、あとは置いておく。

梅雨どきに不安が強くなるのは自然なことです。ある霊園の記事は、題名そのものに「梅雨を乗り越える」と入れていました。季節で湿度が変わる以上、一度対策して終わりではなく、年に何回か見るという付き合い方になります。

この記事は、8社の説明と知恵袋7本をもとにしています。どの会社の言い分が正しいかは決めていません。割れている論点は、割れたまま出しました。

ペンダントやカプセルに納めた分が気になる方は、ふたの構造と入浴の可否をペット遺骨アクセサリーはよくないかに8店ぶん並べてあります。ペットの見送り全体はペットの見送りにまとめていきます。粉骨や洗骨を業者に頼んで遺骨を送るときの運送会社の扱いは、遺骨とゆうパック(人の遺骨の話です)に並べてあります。