埼玉・群馬・愛知・兵庫の4県193市町村を全部数えると、墓石の撤去費を現金で助成していたのは群馬県太田市の1件(0.5%)でした。いわゆる墓じまい費用補助金は、あってもその市町村が持つ墓地の使用者だけが対象で、民営霊園やお寺の墓地を対象にした制度は、公式と例規集で確認できた範囲では0件です(確認できなかった市町村が6つあります)。
ここで言う墓じまいの補助金とは、市町村が、自分の持つ公営墓地を返す人に出すお金のことです。補助金より件数が多いのは、公営墓地を返したときの「使用料の還付」の規定で、193市町村のうち44にありました。ただし多くは、使っていない墓や、許可から数年以内の返還だけが対象。親の遺骨が入って何十年もたったお墓で当てはまる可能性があるのは、条件まで確かめられた中で最大9市町村でした。
4県の市町村の公式ページと例規集(条例・規則をまとめたページ)を2026年9月10日に読んで数え、この記事のために2026年10月1日に主な制度のページを開き直しました。受け取れるかどうかを判断する記事ではないので、最後はお墓のある市町村の案内で確かめてください。
4県193市町村で、撤去費の助成を確認できたのは太田市の1件でした
撤去費を現金で出す制度は1件、使用料の還付の規定は44件、どちらも見つからなかったのが143件でした。
県ごとに見ると、こうなります。
| 県 | 市町村数 | 撤去費の助成 | 還付の規定 | なし | 確認できず |
|---|---|---|---|---|---|
| 埼玉 | 63 | 0 | 3 | 59 | 1 |
| 群馬 | 35 | 1 | 11 | 24 | 0 |
| 愛知 | 54 | 0 | 15 | 38 | 1 |
| 兵庫 | 41 | 0 | 15 | 22 | 4 |
太田市は撤去費の助成と還付の両方に数えているので、群馬の行は1つ重なります。
群馬の11は、群馬県の35市町村を確認した記事の「太田市(助成と還付の両方)1+還付のみ10」と同じものです。兵庫の15は、兵庫県の41市町を確認した記事で「還付の規定あり14」と「還付の様式のみ1(姫路市)」に分けたものを足しています。
「なし」には、条例で原則として還付しないとしているもの、市長の裁量の但し書きだけのもの、集団墓地の整備の補助や火葬の補助だけのものを含めました。「確認できず」は、墓地のページや例規集に届かなかった6件で、制度がある根拠ではありません。県の制度は4県とも見つからず、埼玉県は公式ページの名前に「県営の墓地・納骨堂はありません」と書いています。
「最大9」の数え方
使用していない墓だけが対象の25件は、墓石を建てて遺骨を納めたお墓の墓じまいには当たりません。3〜5年以内だけの9件も、親が何十年も前に使用許可を受けたお墓では期間を過ぎています。残るのは、許可から5年を超えても還付の記載がある8件と、撤去費を助成する太田市の1件。この9件(4.7%)を「親の墓で当てはまる可能性がある」上限として数えました。
これまでの県別の記事とは、数え方が違って見えるところがあります。愛知県の記事では「使い終わったお墓を返しても使用料の還付がある市」を4つ、兵庫県の記事では「条文に未使用の条件が無い市」を8つとしました。どちらも、条文に「未使用」の条件があるかで分けた数です。この記事は、許可から数十年たった墓を前提に数え直しています。そのため、5年以内だけが対象の常滑市や、3〜5年以内の明石・芦屋・加古川・相生・南あわじの5市は、この記事では期間つきの9件の側に入ります。
補助金を探す前に、お墓のある墓地の経営者を見る
先に見るのは市の補助金の一覧ではなく、親のお墓のある墓地を誰が経営しているかです。
見つかった制度はすべて、市町村が持つ墓地の使用者だけが対象でした。太田市の助成について、市のPDFは「助成対象は『太田市八王子山公園墓地』の墓石撤去に係る費用のみです。他墓地の墓石撤去費用は対象となりません。」と書いています。市の側から見れば、自分の墓地を空けてもらうための制度。民営霊園やお寺の墓地の墓じまいに市がお金を出す仕組みは、193市町村の中に見つかりませんでした。
公営の墓地は、数のうえでは少数です。総務省行政評価局の報告書(令和5年9月)は、令和3年度の衛生行政報告例をもとに、「全国の墓地・納骨堂の総数のうち、経営主体が『地方公共団体』である割合は3.5%である」と書いています。これは個人墓地なども含めた施設の数での割合で、お墓の区画の数ではありません。同じ報告書によると、公営の墓地・納骨堂を持つ市町村は、回答した1,231市町村のうち765(62.1%)でした。
3つ目は、上位の記事と食い違うところです。全国向けのコラムは、制度について「お住まいの自治体の制度内容をよく確認し」と書いていました。けれども太田市の制度の説明は「八王子山公園墓地の無縁墓地対策として、墓地返還をするときにかかる墓石撤去に伴う費用を助成する制度」で、市川市の対象は「現在、市川市霊園一般墓地の使用許可を受けている方で、お墓を継ぐ親族がいない方や墓地管理に不安ある方」です。制度を決めるのは、住んでいる場所ではなくお墓のある墓地です。親が遠方にお墓を持っているなら、調べる先はその市町村になります。
知恵袋にも、お寺の墓地なのに市の補助金を探していた人がいました。「墓じまい 補助金」で検索すると補助金の質問は3件しかなく、よくある悩みとまでは言えません。そのうち1件は、お寺の墓地の人が「富士見市は、墓じまいなどの補助金はありますでしょうか?お寺さんだと言い値な感じがして、凄く怖いです。」と尋ねていました(2024年3月15日)。気持ちはよく分かります。ただ、お寺の墓地は公営ではないので、市の制度の対象になる例は193市町村で見つかっていません。
還付の条文は「使用しないで」と「何年以内」を見る
公営墓地に還付の規定があっても、条文に「使用しないで」や「◯年以内」があれば、条文どおりに読むかぎり、何十年も使った墓の墓じまいには当たりません。
使用していない墓だけが対象の型は、群馬県前橋市の条例がわかりやすい例です。前橋市営墓地条例の第8条第1項には、「納付した使用料及び管理料は、還付しない。ただし、使用許可を受けた日から3年以内に未使用の市営墓地を返還したときは、当該使用料の2分の1に相当する額を還付する。」とあります。4県の25件がこの型で、名古屋市・神戸市・さいたま市もここに入ります。
使用後でも期間つきの型は、群馬県の中之条町・草津町・東吾妻町(3年以内)、愛知県の常滑市(5年以内)、兵庫県の芦屋・明石・加古川・相生・南あわじの、合わせて9件。どれも許可から3〜5年以内の返還だけが対象です。
許可から5年を超えても還付の記載があった8件は、次のとおりです。
8件のうち、加西市は25年を超えると表から外れます。春日井市は令和10年(2028年)10月1日から使用済みの墓所の還付をやめる予定と案内しており、縮む方向の例もあります。尼崎市は年間使用料の月割なので、額の性質が他と違う。9件という数は、あくまで上限です。
読んだ条文や案内の多くで、返す前に墓石を撤去して更地に戻すのは使用者の側でした(前橋市・芦屋市・加古川市など)。前橋市の条例は、使用者が原状回復をしなかったときは市が自ら回復して「その費用を使用者から徴収するものとする」としています。還付の規定がある墓地でも、撤去の費用は別にかかります。
撤去費を助成している3市の上限と条件
撤去費の現金助成で、公式に確かめられたのは太田市・浦安市・市川市の3市で、どれも自分の市の墓地だけが対象でした。
浦安市と市川市は千葉県で、4県の外にあります。上位の記事が例に挙げる市なので、2026年10月1日に公式ページを開き直しました。
| 市 | 対象の墓地 | 上限(公式の表記) | 受付の状況 |
|---|---|---|---|
| 群馬県太田市 | 八王子山公園墓地のみ | 「祭祀費用を除く墓石撤去に係る費用として支払った額の総額又は20万円のいずれか低い方の額」 | 市のページは2026年9月28日更新で掲載が続いている |
| 千葉県浦安市 | 墓地公園の通常墓所・小型墓所 | 「補助金額の上限は150,000円」 | 随時受付(2026年10月1日の公式ページ) |
| 千葉県市川市 | 市川市霊園の一般墓地 | 区画により75,000円〜440,000円 | 2026年5月22日に予算額に達して受付終了、9月16日に補正予算で受付再開 |
3市の制度の組み立てや、撤去費の助成・使用料の還付・合葬墓への受け入れの違いは、埼玉県の63市町村を確認した記事で整理しています。
上限の20万円が、墓じまいの費用のどのあたりに当たるか。知恵袋に、都立小平霊園の施設変更制度で両親の墓じまいをして、遺骨を合葬に移した人の質問がありました。「費用は、45万円。」(2026年1月13日)。1件の例で、相場として読める数字ではありません。それでも、上限20万円では費用の全部は埋まらない例がある、という位置関係は見えます。
申請の時期は市によって違うので、撤去の前に確かめる
撤去費の助成を申請する時期は、太田市と浦安市で逆でした。
太田市のPDFは、返還届と同時に助成金の申請はできないとし、「墓石の撤去が完了した後に申請をお願いします。」と書いています。対象は、平成31年4月1日以降に返還届を出して撤去を終えた利用者で、墓地の管理料の滞納がない人。一方の浦安市は、申請書に「墓石の撤去など、原状回復に要する費用に係る見積書」を添えて申請する方式で、補助金は「返還後に市から補助金(補助金額の上限は150,000円)を交付します」としています。撤去の後に申請する市もあれば、撤去の前に見積書で申請する市もあるということです。
どちらの方式でも、制度を知るのが撤去の後では困ります。知恵袋には、施設変更制度で墓じまいを終えたあとに「今からでも、利用出来ますか?」と尋ねた人がいました。回答は、小平霊園の管理事務所に直接問い合わせるよう勧めるもので、質問者は「一度聞いたけど、ハッキリしませんでした。」と返しています(2026年1月)。
改葬の許可そのものは、お墓のある市町村の窓口で別に取ります。助成や還付の担当は墓地を管理する課で、改葬の窓口と分かれていることがあります。太田市は改葬は市民課、助成金は花と緑の課でした。
「補助金あり」と書かれたページを公式と突き合わせました
「墓じまい費用補助金」の上位10件(2026年10月1日)のうち9件は、市町村名ごとに作られた業者のページで、その記述を公式ページや条例と1件ずつ並べました。
母数をつけて割合を出しているページは、10件の中に見つかりませんでした。
阿賀町と泉大津市は、「情報はありません」「役所に確認」とされていた町と市に、条例の還付の規定があった例です。泉大津市の条文には、未使用に限る条件は見つかりませんでした。逆に、高崎市と吹田市はページの記述と公式がほぼ一致しています。「情報なし」のすべてが外れているわけではなく、条例までは見ていない、というのが共通点でした。
「補助金あり」の一覧に並んでいても、撤去費を現金で出しているのは太田・市川・浦安の3市でした。水戸市は、名前に「返還」とあっても納骨をしたことのない墓が条件。都立霊園は、原状回復の免除を2020年の都の資料まで確かめられましたが、現行の扱いは霊園の管理事務所に聞くしかありません。
補助金が見つからなかったときに確かめること
お墓が民営霊園やお寺の墓地なら、補助金を探すより、撤去の見積もりと、遺骨の移し先の費用を比べるほうに手間を回すのが近道です。
国の制度は、確認できませんでした。厚生労働省の墓地埋葬法のページにも、総務省行政評価局の報告書にも、国の補助制度の記載はありません。報告書は、市町村の独自の取組として「合葬式施設の整備、合葬式施設への改葬等に関する費用の免除、墓じまいのために利用するローンへの助成」などの例がみられた、と書いているだけでした。市町村の側でも、横浜市は「横浜市には墓じまいに関する補助金制度はありません。」、神戸市は「神戸市では助成金制度は設けていません。」と公式に書いています。
公営墓地の中には、撤去費ではなく、合葬墓に移す人の使用料をかからなくする市があります。千葉県市原市は条例で、合葬墓を使うために墓地を返す人の合葬墓の使用料を求めていません。総務省の報告書は、愛媛県新居浜市について「市営墓地の使用者が区画を返還し、引き続き合葬式施設を使用する場合は、当該施設の使用料を全額免除する制度を条例により定めている」と紹介しています。親のお墓が公営墓地で、遺骨を同じ市の合葬墓に移すつもりなら、この型の制度があるかも見ておく価値があります。
4県の市町村ごとの一覧は、埼玉県の63市町村、群馬県の35市町村、愛知県の54市町村、兵庫県の41市町の記事に、根拠のURLつきで載せています。費用の負担で家族の話がまとまらないときは、墓じまいの費用は誰が払うのかを先に読んでみてください。相続や祭祀の承継にかかわる判断が要りそうなら、専門家に相談を。
市川市のように、同じ年のうちに受付が止まって再開する制度もあります。数え直したら、日付を入れ替えて書き直します。